反応器設計方程式

今回は,化学工学,反応工学における反応器設計について完全混合流れのCSTRと,押し出し流れのPFRを例に説明していきます。

 

反応器は文字通り工場で,化学反応を伴って製品を作る際に化学反応を起こす場所のことです。工場設計を行う際の順番として,

 

・生成物質の純度と生産量を決める

・反応器と分離器からなるプロセスフロー図(PFD)を作製する

物質収支を取り,反応器が達成すべきスペック(単通反応率,流量など)を計算する

・反応器モデルを決定し,設計方程式を解く

 

の流れで進んでいきます。大学の講義では,主に最後の反応器モデルを決定し,設計方程式を解く部分が定期試験に出るので,液相反応を例にとってここの部分の考え方を以下で説明していきます。

 

  • CSTRとは

 CSTRとはContinuous Stirred Tank Reacterの頭文字をとったもので,完全混合反応器とも言います。これは,

 

「原料液を反応器に流入させると,反応器内に入った瞬間に混ざり合い反応器内の液は一定濃度になっており,反応器出口から出てくる生成物は反応器内の液と全く同じ組成になっている」

 

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という反応器のことです。実際に,完全混合の反応器というものは実現不可能ですが,反応器サイズを小さくするなど工夫すると,ある程度完全混合に近づけることは可能であり,CSTRは一つの代表的な反応器のモデルとなっています。

  • 設計方程式を立てる

 続いて,反応器設計に入ります。ここまでで,CSTRっていう反応器モデルがあるんだ~ってところまでは理解してもらえたと思います。じゃあ,

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のCSTRを作れと言われても,いきなりはどうしていいかわかりませんよね。ここで,CSTRの設計方法を解説していきます。

 

 まず,物質収支をとっていきます。基本的な物質収支の取り方は系と注目物質を決めてその物質について,

 (①系での変化量)=(②系への流入量)-(③系からの流出量)

+(④系内での生成量)-(⑤系内での消費量)

このように立式することで計算できます。具体的に計算していくと,

\displaystyle\frac{dn _{A}}{dt}=F _{A0}-F _{A1}+0-rV

濃度ベースに書き換え,定常状態の液相反応であることからを一定とすると,

0=C _{A0} v-C _{A1} v+0-rV
rV=C _{A0} v-C _{A1} v
V=\displaystyle\frac{(C _{A0}-C _{A1} )v}{r}=\displaystyle\frac{C _{A0} x _{A} v}{kC _{A1}}
\displaystyle\frac{C _{A1}}{C _{A0}} =\displaystyle\frac{x _{A} v}{kC _{A1} V}

これで,反応器体積が計算できますね。流通反応器には空間時間という概念があり、定義は以下で

 τ≡\displaystyle\frac{V}{v}

これを用いて

 \displaystyle\frac{C _{A1}}{C _{A0}} =\displaystyle\frac{x _{A}}{kC _{A1} τ}

のように表すことが多いです。

  • PFRとは

 PFRとはPiston flow Reacterの頭文字をとったもので,押し出し流れ反応器とも言います。これは,

 

「原料液を反応器に流入させると,反応器内に入っても進行方向には混ざり合わず,反応器内の液は進行方向に濃度分布を持つ。」

 

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という反応器のことです。実際に,押し出しの反応器というものも実現不可能ですが,流通反応器の直径を小さくするなど工夫すると,ある程度押し出し流れに近づけることは可能であり,PFRは一つの代表的な反応器のモデルとなっています。

  • 設計方程式を立てる

 続いて,反応器設計に入ります。ここまでで,PFRっていう反応器モデルがあるんだ~ってところまでは理解してもらえたと思います。じゃあ,

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のPFRを作れと言われても,いきなりはどうしていいかわかりませんよね。ここで,PFRの設計方法を解説していきます。

 まず,物質収支をとっていきます。今回のモデルでは進行方向に濃度分布を持つため,微小区間を系として取ることでCSTRと同様に計算していきます。

 0=F _{A}-(F _{A}+dF _{A} )+0-rdV

濃度ベースに書き換え,定常状態の液相反応であることからを一定とすると,

0=C _{A} v-(C _{A}+dC _{A} )v+0-rdV
0=-vdC _{A}-rdV
rdV=-vdC _{A}

反応率ベースに書き換えて,

rdV=vC _{A0} dx _{A}
\displaystyle\frac{dV}{dx _{A}}=\displaystyle\frac{vC _{A0}}{r}

形としてはCSTRと同じになっていますね。これを積分することで,反応器体積が計算できます。

V=\int\ _ {x\ _{A0}}^{x\ _{A1}} \displaystyle\frac{vC\ _{A0}}{r} dx\ _{A}=\int\ _ {x\ _{A0}}^{x\ _{A1}} \displaystyle\frac{v}{kC\ _{A0} (1-x\ _{A} ) ^ {2}} dx\ _{A}

参考

・現代化学工学